重いものが擦れあったような音だった。それはしばらくの間鳴り続けた後すっと消えた。辺りはさっきまで以上の静けさが広がっていた。窓から外を覗く人が見えた。何も変わった様子はない。アンさんと目が合った。
「びっくりした。今の何?」
「さあ」
アンさんも首を傾げたが、すぐにシイのほうを向いた。彼女はぼうっと空を見上げていた。
「シイ?おーい」
アンさんはシイの目の前で手を振った。シイはきょとんとした顔を向けた。
「大丈夫?」
「はい」
シイは微笑んだ。シイはここでないどこかを見ているようなまなざしをこちらに向けた。
「シイ、そろそろ行こう」
「……うん」
シイはつぶやくように返事をした。
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