神殿

 街の中心からやや外れた場所。どこまでも暗い闇の中に、白い建物がぼんやり浮かぶように建っていた。不気味な雰囲気だった。

「久しぶりに来た」

「私も」

 シイはあたりに立ち並ぶ柱を調べ始めた。暗くて細部はよく見えない。しかしそれは、遠めでも分かるくらいにボロボロに崩れかけていた。

「ねえ、これ見て」

 シイは入り口の近くにしゃがんでいた。彼女の指の先にはいくつかの足あとが残っていた。

「誰か来ていたみたいだな」

「二人かな。ここは普段人が来る場所じゃないはずだけど」

 シイは道を作るように建てられた白い柱に触れた。

「ねえユウ、知ってる?ここにまつわる話」

「知らない」

シイは柱を見上げた。

「昔のことだけど、ここね、今まで何回か壊そうとしたことがあったらしいの。ここは街の中心からそう離れてはいないし、何かに使おうとしたんだと思う。でも、それはできなかったらしいの」

 シイはこちらを向いた。俺は肩をすくめて見せた。

「壊せなかったらしいの」

「壊せなかった?」

「そう。いろんな道具、いろんな方法でこの建物を壊そうとしたけれど、結局どれもダメだったらしいわ。だからこのまま放置されているんだって」

 本当の話か知らないけどね、とシイは柱をなでた。確かに傷はないようだったが、それでも表面は剥がれかけていた。それに触れようとしたとき、名前を呼ぶ声が聞こえた。

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